消せない思い(ペコ編)

マロン 10歳

長崎へ戻るのとほぼ同じ頃に運命的に出逢ったマロンとの暮らしもちょうど10年を経過しました。

物心がついた頃から常にうちにはワンちゃんが居ました。世話をしていたのは母親でした。私個人としては、今のマロンとの関係のようには親しくは接していませんでした。
これまでワンちゃんは全て外で飼われていました。ミックス犬のペコは茶色い毛色、ミックス犬ケンは白い毛色。ミックス犬ドンは白と茶の混じった毛色、そしてマルチーズのコロと、全てオスのワンちゃんがこれまでうちで飼われていました。

今回は最初のペコについて。
物心がついた頃から小学生の5〜6年生までの間一緒でした。
時々散歩に連れて行ってたのか?記憶は残っていません。「他に関心事が多い小学生」といえばそれまでです。
当初は古い「二軒長屋」の社宅で、ワンちゃんが飼える環境でしたが、次々に鉄筋5階建てのアパートが新築されて、とうとう引っ越す事になりました。
アパートでは飼えなくなったペコは可哀相に保健所へあずけられる事になったんだと思います。
ある下校時、小学校の校門を出たところで、町役場から檻に入ったペコたちがトラックの荷台に積まれ運ばれていく瞬間に出会いました。
多分ペコは、走り去るトラックから私に気がついて鳴いていたと記憶しています。
……ただ見送る以外に何もできなかった私。
小学生とはいえ、新しい住居に越せる事にばかりに気を取られていた自分が情けない思いでいっぱいになった瞬間です。
幼い頃の記憶が殆ど消えていく中で、この瞬間の出来事は消えません。むしろ消したくもありません。
何をどうする事もできなかったとは思いますが、あまりにも辛過ぎます。
もしもペコが誰かに保護されて、幸せな余生を過ごせていたならと願うことしかできません。