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Episode 186 長崎 大村湾一周ポタリング紀行

 2009/3/17(火)快晴。
日中の最高気温は18℃くらいだったと思います。午前9時頃に発ち、日が暮れた19時頃帰着しました。
湾を周回する道を、南側地点から反時計回りに約9時間の走行(食事/休憩除く)でした。
全走行距離は約136キロ、5市4町を巡りました。下り坂での最高車速は、ほぼ50km/hに達していましたが、当然上り坂も多く、平均速度は15.4km/hと、思いのほか伸びませんでした。

 家を出発して約10分程走ったでしょうか?広く海が見渡せる場所までやって来ました。
時間は午前9時を少しまわったところです。快晴の空と、わずかに吹く風は心地よく、絶好のコンディションです。
いよいよ小さな旅の始まりです。


 とてものどかな風景が続きます。沖に見える島は、箕島といいます。
島のすべてが1975年に世界初の海上空港として開業した長崎空港です。最速マッハ2.2で飛行する超音速旅客機コンコルドが飛来した数少ない空港です。国内では羽田、関空、長崎のみです。
風のない日の琵琶湖を思い出してしまうような光景です。まるで鏡のような水面です。この先、長い道のりですが、穏やかな気候は、走る気力を充分に与えてくれます。
先日、クルマで通りがかった時に、この傍にある無人販売所で一袋100円のみかんを買って帰りました。
たっぷりな陽の光と、汐風がおいしいみかんを育ててくれています。


 ところどころ極端に狭い幅員の国道207号線を走ります。
複雑な海岸線に沿った眺めのいい道路です。傾斜のほとんどは、段々に広がるみかん畑となっています。
幅員拡張工事の手が入っていない所は、遠い”あの頃”の記憶の風景を保っているようです。
以前、GWに京都からクルマでの帰省時にこの道を走りました。窓とサンルーフを全開にすると、柑橘の香りが一気に風と一緒にやってきました。少し広い場所にクルマを停めて確認すると、白い小さなみかんの花が斜面に植えられた木いっぱいに咲いていました。


 JR長崎本線の旧線です。小学校低学年の頃は、この線路をSLに引かれた寝台特急さくら等、全ての列車が走っていました。遠い昔、走る列車が見える小学校の教室の窓からの光景を思い出しましたが、もう夢のような淡い記憶です。
空と海の青に映えて、菜の花が鮮やかに目立っています。もう少し走ると、湾の最南部付近になります。実は、数日前にクルマで走行中に見たこの景色が、この決行を決断させたんだと思います。
リアス式の海岸線を縫うように続く道路は、アップダウンの連続です。出発してもうすぐ2時間になろうかという頃です。
iPhoneで列車時刻表を調べましたが、残念ながらこの時間に通過する列車は上下ともありませんでした。


 交通量の多い国道34号線を離れて海沿いの道へ向かいました。左側に広がる大村湾を眺めながら走ります。これまで走ってきた道路が対岸に見えます。
琵琶湖大橋や近江大橋みたいに橋が架かっていたら、渋滞緩和や距離的にも相当時短できるんですが、人口の少ない地方ではなかなか恩恵を受ける事はできませんね。
ひと山越えて長くなだらかな坂道を下ると再び国道34号線へ合流します。合流地点に近い田んぼにレンゲが咲いていました。実に約30年振りに長崎で見るレンゲになります。


 空港がよく見える場所へとやって来ました。空港へアクセスしている長い橋の手前から見る長崎空港ターミナルビルです。ちょうど飛行機が離陸していきました。
長崎県内では珍しい平坦地に恵まれた大村市。この付近は、平坦なうえに広く直線的な道路が続き、とても走りやすいです。平均車速が気持ちよく伸びていました。
確か、17km/hを大きく超えていたと思います。海岸線も、出入りが少なくこれまでとは異なる景観です。


 大村市内で休憩中です。出発して約4時間の地点になります。走行距離は60キロくらいになるでしょうか。
バイクは1998年型 PEUGEOT マウンテンバイク VTT200 です。タイヤはオリジナルよりも若干細い26×1.5インチサイズに交換しています。フロントフォークもバイク購入から数年後にサスペンションタイプに交換してます。
海へ続く細い一本道に誘われて寄り道しました。海と堤防の組み合わせというのは、何処も同じような風景になるのかも知れませんが、この景観が伊勢の二見ヶ浦海岸に似てるなと思いました。
伊勢湾の波打ち際は荒い砂地の浜がありましたが、こちらはすぐに海です。海の感じだけなら、伊勢湾というよりもやっぱり琵琶湖かな。


 東彼杵町で国道が分岐します。佐世保方面へ向かう国道205号線へ左折し、大村湾に沿って湾北部へ向かって走ります。
国道205号の川棚町内が予想外の坂道で、大型車両等の交通量が多い割に路肩もなく、数少ない歩道も途切れ途切れで状態が悪く、肉体的にも精神的にもかなり疲れました。景色も単調で、「何処か見に行こう」という余裕もなかったのが悪循環でした。
急ではありませんが長い登り坂が続きます。全行程を走り終えて振り返ると、いちばんしんどかったエリアがこの国道205号線の東彼杵町と川棚町でした。


 JRハウステンボス駅に到着しました。
出発から約6時間が経過しました。この辺りが湾の最北部付近。線路右側に、川にしか見えない海(早岐瀬戸)があり佐世保湾に続いてます。この早岐瀬戸の向こう側に広大なハウステンボスがあります。
ハウステンボス側の道路を走ると気分的にも楽しめたと思うのですが、この時点では周辺の道路状況が把握できていなかった為、国道202号線を普通に走ってしまいました。


 針尾島の峠道を登り、高さが135m以上ある3本の針尾送信所無線塔が近くに見える頃、左に新西海橋が見えてきました。出発から約7時間の地点です。
この針尾送信所無線塔ですが、視界が良い日には、ほぼ湾の南端付近にある公園から肉眼で見える事もあります。直線距離で約30キロは離れていると思います。
湾の南端付近は、この日走り始めて2時間過ぎた辺りになります。


 そろそろ、走行が100キロに近い頃、西海橋に到着しました。桜の花が随分咲いています。
それにしても、歩道のない往復2車線は、今では随分狭いですね。手前が今走ってきた佐世保市側の針尾島、向こう側は西彼杵半島(西海市)です。
橋桁は結構高い位置なので、高所恐怖症には辛い場所です。この橋のすぐ右隣には、桁下に歩行者専用道があり、片側2車線の新しい橋(新西海橋)もあります。(西海パールライン有料道路)。
海は佐世保湾を経て外海へ繋がっています。


 西海橋から対角側の大村湾を望む風景です。こうして見ると、結構走ってきたなと実感します。
ところどころで渦巻いている潮の流れが早いこの針尾瀬戸が大村湾と外海の間を船て行き来できる唯一の場所です。
もう一箇所ある早岐瀬戸は数メートルと極端に幅が狭く浅い急流の箇所があり、佐世保湾まで抜けられるのは多分カヌーやゴムボートのような小舟じゃないと無理ではないかと思います。


 西海橋を渡り西彼杵半島へやってくると、ようやく完走の実感が湧いてきます。体力は相当に低下していますが、残りの行程は気力でなんとかといったところです。
国道206号を南へ走り続けます。だんだん影が長くなってきました。急な坂道は多くないのですが、強い向かい風に押し戻される感じで、スムーズに走れません。
弱りきった体力が更に奪われ結構辛いです。
出発から約8時間が経過していますが、下り坂でも思うように進まず距離が伸びません。


 再び静けさを取り戻した海です。大村湾は、外海に繋がる部分が極端に少なく閉ざされている事と、河川の影響で外海と比べて塩分濃度が若干低いそうです。暖流の影響も受けにくいようで、冬場の水温も低く稀に薄く氷が張る地域もあるようです。
見かけた事はありませんが、スナメリやカブトガニが生息しているようです。


 6:46pm.....いよいよ隣町まで周回して来ました。到着まではあとわずかです。肉眼では、島の右側奥に空港の灯りがキラキラと輝いて見えていました。日が暮れて、急速に闇が広がる中、一日の旅がようやく終わります。
急な決行になりましたが、最高気温が約20℃までくらいの気候が、自分にとってはベストだと思っています。前日の天気予報と当日朝の気候と体調で決心しました。
さて、次は何処を走るのか?果たしてその時バイクは、KONA?それともMARIN?のクロスバイクに変わっているのでしょうか?

2009年3月17日撮影